第102回『TOKYO月イチ映画祭』2026年1月11日(日)

■ 前回グランプリ作品上映 ■(無料)12:50~

● 作品『ひいくんのあるく町』 47分/2017 監督 青柳拓

【あらすじ】
人通りが少なくなった町を、毎日のように歩き続ける“ひいくん”。町の人々と自然に言葉を交わし、ささやかな手伝いをしながら日常をつないでいく。その姿を静かに見つめながら、変わりゆく地方の現実と、そこに暮らす人々の穏やかな温もりを描いたドキュメンタリー。小さな営みの連なりが、町の記憶や風景にそっと光を当て、忘れられつつある時間をやわらかく呼び戻していく作品。

【紹介文】
コロナ禍で食い詰め、UBERの自転車配達員となった自分自身をドキュメンタリーの対象として、当時生まれたフレーズ「新しい日常」の実相を浮かび上がらせた『東京自転車節』(2021年7月公開)で、大きな注目を集めた青柳拓監督。その後『フジヤマコットントン』(2023)『選挙と鬱』(2025)などの新作を発表していくが、他のドキュメンタリー監督たちと一線を画すのが、その“優しい視線”である。
批評精神を欠くとか、そうした否定的な意味合いではない。コロナ厳戒下の首都、障害福祉サービス事業所の日常、真夏の参議院選挙等々、どんな題材に当たっても、その“優しい視線”で真摯に物事を捉える。決して、偽善に堕することはなく。
そんな彼の原点であるのが、「日本映画大学」での卒業製作であり、劇場公開デビュー作となった、本作『ひいくんのあるく町』である。
知的障害のある中年男性ひいくん。父が亡くなり、老いていく母と、離婚して戻った姉とその娘との4人暮らし。ルーティンのように、日々町を出歩いては、近隣の住人たちと交流する。幼い頃からアラフォーの今まで、町全体がひいくんを見守り、まるで育んできたかのようである。
そして、少年時代からひいくんの歩く姿を見ていたという青柳監督の“優しい視線”も、実はこの町に育てられてきたことが、浮かび上がる。
そんな町も、ホームセンターなどの大型店が出来た頃から、個人商店は消えていき、若者の姿は減っていく。そうした、日本の地方都市のどこにでもある“問題”を浮かび上がらせながら、青柳監督は願っている。ボクの故郷“ひいくんのあるく町”が、失われないようにと…。(松崎まこと)

【受賞・上映歴】
座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル入選/ニッポン・コネクション上映

【監督プロフィール】
山梨県市川三郷町生まれ。日本映画大学で学び、卒業制作として初監督作『ひいくんのあるく町』(2017)を発表。大崎章監督、七里圭監督の現場に参加しながら経験を重ね、2020年に短編『井戸ヲ、ホル。』を制作。2021年にはテレビ東京「ノンフェイクション」で番組ディレクターを務め、同年『東京自転車節』を劇場公開。後にアメリカ公共放送PBSでも放送される。2024年に『フジヤマコットントン』、2025年に『選挙と鬱』を公開。

【キャスト】
渡井秀彦

【スタッフ】
監督:青柳拓
プロデューサー・録音:植田朱里
撮影:山野目光政
編集:朝野未沙稀
題字:渡井秀彦

予告編

■ Aプログラム■(有料)14:10~

● 作品 『餃子と白米』 7分/2024 監督 柳 琦

【あらすじ】
日本生まれ日本育ちの中国人の柳琦は転職活動の面接で中国人で嫌な思いをしたことあるかを聞かれる。悪気の無いその質問をする面接官に、外国人に対する潜在的にある差別意識に違和感を感じた。国籍のレッテルを他人に貼る事への疑問符を投げかける。

【紹介文】
ひとは思い込みから、簡単には逃れられない。悪しきステロタイプに、つい流されがちである。
「女だから…」「日本人じゃないから…」
そんな偏見が昂じるままに、SNSなどで声高に開陳してしまう輩が跋扈しているのが、“今”という時代である。
本作『餃子と白米』は、日本生まれ日本育ちの中国人である柳琦監督が、自らの不愉快な体験を基に、主演も務めて完成させたショートムービー。「差別ではない。区別だ」というのは、昨今のレイシストや排外主義者の常套句だが、本作に登場する日本人はまったく自覚はないままに、“区別”のつもりで、限りなく“差別”に近い振舞いをしてしまう。柳監督はそれをズバッと、笑い飛ばす。
私が審査委員長を務めた「第2回熊谷駅前短編映画祭」では、ゲスト審査員の吉田大八監督が本作を強く推した。結果としては新たな賞が設けられ、副賞として1週間の劇場公開が実現した。
最後に、『餃子と白米』というタイトルについて。中国に於いては、小麦粉の皮で餡を包む餃子は、主食。日本の餃子定食のように、これをおかずに白米を搔っ込むことなど、「信じられない」人が多いという。あれはあくまでも、日本流の食べ方なのである。そんなことを知っておいた方が、本作のラストが、余計にしみ入る筈。(松崎まこと)

【受賞・上映歴】
2024年 ERIFF国際和解映画祭 観客賞
2025年 熊谷駅前短編映画祭 優秀賞 シネティアラ21賞

【監督プロフィール】
1997年 11月29日生まれ。
愛知県生まれ愛知県育ちの純中国人。
2021年に新卒で入社した会社を、映画制作を夢見て脱サラし、上京。上京後すぐNCWにて映画制作を学ぶ。実習作品「かっけぇ同士」を制作。(当作U-NEXT配信中)
その後再就職先で激務と映画制作に打ち込めない環境から、うつ病を患う。完治までの空白の1年半を乗り越えた後、映画制作を再開。2作目の短編映画、「餃子と白米」を制作。
映画制作の傍ら、劇団かもめんたるでボランティアスタッフをするなど、ささやかながら積極的にものづくりに触れ、日々勉強に奮闘している。

【キャスト】
柳 琦、佐藤栄太郎(indigo la End)、猪川健

【スタッフ】
撮影:丘澤絢音/ 録音:山岳タケシ、千葉氣弓/ 監督・脚本・編集:柳 琦

● 作品 『あのこを忘れて』 57分/2021 監督 谷口雄一郎

【あらすじ】
ある病気の特効薬。その副作用は、特定の人を「忘れる」ことだった。
別れた恋人を「忘れた」男・瀬戸幸也。長年、幸也に片思いしてきた女・林美琴は、つい自分が恋人だったとウソをついてしまう。
最愛の子供を亡くしたことを「忘れた」妻・長門千紗。夫・長門浩次朗は、そのまま、子供がいなかったことにしようとする。平穏な暮らしを続ける彼らだが、歪みは少しずつ生まれていく。
それぞれの決断、そして、それがもたらす行く末とは……。
2組の男女と寄り添う人々が織りなす、悲しみと優しさに彩られた「あのこ」への物語

【紹介文】
過ぎた日の恋愛について、「男は心のファイルに保存し、女は上書きする」という説が、よく唱えられる。個人的な経験からすれば、そんな傾向もあるように思えるが、“保存派”か“上書き派”かは、実際のところは男女差というより、個人差に過ぎないのだろう。
幸せだった日々のことを思い返してしまうと、ただただ現在の辛さが際立ってしまうケースは少なくあるまい。2004年のアメリカ映画、ミシェル・ゴンドリー監督の『エターナル・サンシャイン』は、そんな辛さに耐えられなくなった男女が、科学的な技術によって、それぞれに愛した相手の記憶をすべて消し去ろうとする話。しかし現在そして未来は、過去が積み重なったからこそ、成立している。ある日ある場所ある局面で、その人の存在こそ「すべて」という想いを強く抱いたからこそ、今の自分があったりする。
己を辛くする記憶を消したからといって、果して幸せになれるのだろうか?それは決して、“恋愛”に限った話ではなく…。
本作『あのこを忘れて』は、まさにそこを追求した作品である。登場人物たちは、自ら記憶を消し去ったわけではなく、感染症の特効薬の副作用で、特定の人物のことを忘れてしまう。ちょっとご都合主義の感もあるが、この作品が、コロナ禍の最中に行われたワークショップがベースになった経緯を考えると、自然発生的に生まれた設定だったのだろう。冒頭に記した、「男は心のファイルに保存し、女は上書きする」が、ナチュラルな形で描かれるのも、興味深い。
私は谷口雄一郎監督の過去作を数本鑑賞しているが、「あの時ああしていれば…」「もっと別の局面もありえた」という逡巡するような人物が登場するのが、印象に残っている。恐らく監督自身のキャラや苦い経験に沿っているのかと推測するが、初めての長編にして劇場公開作だった本作は、そうしたことを鑑みても、現状での彼の集大成となっている。もちろん、ここで終わるわけがない、この先もあるという期待も籠めて。(松崎まこと)

【受賞・上映歴】
映像グランプリ入選/ 中之島映画祭入選/ 高崎映画祭公式上映

【監督プロフィール】
愛知県春日井市出身。大学卒業後、日本映画学校へ入学。在学中から若松孝二監督作『実録連合赤軍あさ ま山荘への道程』等フリーの録音助手として映画製作の現場へ赴く。卒業後、シナリオ執筆を本格的に再開し、『純子はご機嫌ななめ』が伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2009において短編部門大賞を受賞。自ら映像化し監督業に進出した。2013年『ゆびわのひみつ』にて国内外映画祭にて7冠を達成。以後、『Selfish.(ButKind)』(13)『Almondtaste』(13)『彼女がドレスを脱ぐ理由』(14)『私以外の人』(15)『ハローグッバイ』(16)『しらないで』(17)『Surface』(20)とコンスタントに作品を製作し、映画祭入選を続ける。『あのこを忘れて』は、自身初の劇場公開作となる。

【キャスト】
保坂直希、相馬有紀実、中村更紗、紫藤楽歩、壷田大貴、白畑真逸、木村梨恵子、石橋征太郎

【スタッフ】
撮影・照明:春木康輔/ 録音・整音:小牧将人/ 衣装・ヘアメイク:平林純子/ 音楽:佐久間あすか/ 助監督:ニノミヤタカシ/ エグゼクティブプロデューサー:ヤスカワショウゴ/ プロデューサー:山元隆弘

予告編

● 作品 『本当はまん ここ わい心霊の話』 8分/2022 監督 岩崎友彦

【あらすじ】
友蔵は死別した妻・ミツコに会えるならばと、イタコに降霊を依頼した。いざ儀式が始まると、どうにも胡散臭い雰囲気が漂ってくる。イタコは、いちいちエロい方向に勘違いするのだ。友蔵は、ただミツコに会いたいだけなのだが、実現するのか苦慮してしまう。

【紹介文】
『クライングフリーセックス』で、各国の映画祭で爆笑の渦を巻き起こした岩崎友彦が監督と出演を務める。水井真希がエッチなイタコに扮して依頼者を翻弄する。水井はマーロンブランドばりに口に含み綿を入れて役作りしたり、自前のろうそくを用意して無暗に岩崎を責めたりノリに乗っていた。撮影を務めた吉田康弘氏が郷里の福岡に帰るこの機会に上映をする。(岩崎友彦)

【受賞・上映歴】
u-nextで配信

【監督プロフィール】
愛犬ハナとともにTOKYO月イチ映画祭で月に一回司会を務める。

【キャスト】
水井真希、岩崎友彦

【スタッフ】
撮影:吉田康弘 / 録音:野火明 / 緊縛:熊王涼

■ Bプログラム ■(有料) 16:30~

● 作品 『GreenTea-r 緑色の涙』 29分/2004 監督 木内一裕

【あらすじ】
昭和20年。東京生まれの雪子は「その町」で市長を務める祖父の家に疎開していた。
厳格な祖父、美しい叔母との平穏を一閃の原爆が打ち砕く。
朽ちていく叔母、復讐を誓う村人たち、揺れ動く祖父の想いは…。
「そのムラの戦争は8月6日から始まった」

【紹介文】
フィルムからビデオへの移行期のフォーマットでの作品であるが、映画的なルックの作り方には試行錯誤があった事と思う。落ち着いた構図とライティングが美しい。自主の制約の中でのミニマライズされた表現。戦中から戦後への世界の変化を屋敷の中に舞台を限定して外の世界を想起させる。物語は少女の視点を通して描かれる。子供を美化して描かず、小さい人として、その残酷さも暴いていく。監督の誠実な世界との向き合い方を感じる。(岩崎友彦)

【受賞・上映歴】
北米映像祭(US International Film & Video Festival) 短編映画部門・準グランプリ(Silver Screen Award)/ 宝塚映画祭・グランプリ
ワシントンDC映画祭・ヒロシマ平和映画祭・ベルリン映画祭(マーケット)他

【監督プロフィール】
同名の漫画家・小説家とは違い、平素は零細商社を営む傍ら、自主映画を製作する老アマチュア。
40代目前から自主映画を製作を始め今日に至る。本作は親族の原爆の記憶を元に製作したファンタジー。

【キャスト】
滝田裕介、飯島真理、矢端名結、川井康弘、山家浩

【スタッフ】
撮影監督:木村重明/ 照明:渡辺大介/ 音楽:モリ川ヒロトー/ 製作監督脚本:木内一裕

● 作品 『はりこみ・喫茶店・午後』 18分/2020 監督 板垣雄亮

【あらすじ】
都内で発生した強殺事件の重要参考人を、「タイショウ」として監視中 の捜査員・尾藤(鳥谷)と武藤(池田)の会話を描く。とある日の午後、 二人は都内の喫茶店で対象の監視を続ける。

【紹介文】
第58回グランプリの”はりこみ”の続編である。みんな大好き刑事物の張り込みシーン、緊張感ある画面構成なのに、なんだか会話はオフビート、普通の会社員の職場の私語と変わらないのが可笑しくてリアル。今回は喫茶店での店員を装っての張り込みという変化球。インカムで表情を変えず口元を気取られずにしゃべるという難易度高い演技なのに会話オフビートw話も本筋からいつの間にか脱線して行く。また次も見たいなあ(岩崎友彦)

【受賞・上映歴】
U-NEXT・Amazonプライムビデオにて配信中

【監督プロフィール】
1973年 東京都出身
2001年に劇団「殿様ランチ」を旗揚げ。すべての脚本・演出を担当し、自身も全作品に出演。その他、数多くの舞台・TV・映画に出演。
初監督作となる前作「はりこみ」(2017)は、多くのインディーズ映画祭にて賞を受賞。(第58回 TOKYO 月イチ映画祭 2018 年間グランプリ)
その続編となる今作は監督として2作品目となる。

【キャスト】
池田香織・鳥谷宏之・多田昌史・辻香音

【スタッフ】
監督 脚本:板垣雄亮/ 監督補:弓田一徳/ 撮影:橋坂省吾/ プロデューサー:西田みゆき

予告編

● 作品 『ホノルル』 20分/2024 監督 村口知巳

【あらすじ】
ある日妻は、ビデオカメラを持ち出し、夫の日常を撮りはじめる。自分がこの世界にいないように振る舞ってと言う妻に、夫は戸惑う。妻が夫を撮りはじめた、その理由とは・・・

【紹介文】
以前月イチ映画祭で村口監督の『あたらしい世界』を上映したが、説明が少なく詩的でスタイリッシュな作風が非常にすばらしく目の離せない監督の一人となった。本作『ホノルル』もまるで村上春樹の短編小説を読んでいるような不思議な気分になる非常に面白い短編映画だった。
文学や絵画と違い、作品作りに関わる人間が多い映画の場合、繊細なイメージを映画で表現するのは非常に難しいのだが、村口監督は見事に成功していて本当に凄いと思う。
そしてなんと今年、長編作品『HOLD UP MORNING』が劇場公開されるという。ますます目の離せない監督となってゆく村口監督の作品、是非観てください!(野火明)

【受賞・上映歴】
・第12回 八王子Short Film映画祭 準グランプリ
・ダマー国際映画祭2025
・第23回 中之島映画祭 優秀作品賞
・ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2025
・CINEMA JAM vol.1 映画祭 2025
・CAMERA JAPAN FESTIVAL 2025
・丘の向こうに森の映画祭 2025
・第9回 渋谷佐世保短編映画祭
・信州諏訪ふるさと国際映画祭 2025 優秀作品賞
・第10回 福井駅前短編映画祭 優秀作品賞

【監督プロフィール】
香川県出身。2017年に伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞でグランプリを受賞。受賞作を自ら監督したのをきっかけに、本格的に映画制作をはじめ、NAGOYA NEW クリエイター映像AWARDグランプリ、ショートショートフィルムフェスティバルに2年連続ノミネートなど国内外の映画祭で高い評価を得る。来春、初の長編映画『HOLD UP MORNING』が新宿のケイズシネマと下北沢のシネマK2にて劇場公開予定。

【キャスト】
つかさ、櫛島想史、下道千晶

【スタッフ】
監督:村口知巳
撮影:近藤実佐輝
照明:竹本勝幸
録音:太田祥介
ヘアメイク:河本花葉
衣装:KAORI、NANA
助監督:宮原拓也
制作:かおり、竹本美香、西舘那奈、菊地美帆
録音助手:齋藤厚仁
音楽:ioni

予告編

■ 閉会式 18:40~